ホーム > レビュー > 実践インバウンド対策・おもてなし表現講座


実践インバウンド対策・おもてなし表現講座

2011.02.03
歐陽宇亮 (Au Yeung Yu Leung)

中国語サイトの表記が国際問題になる日

中国からのお客様に対する「おもてなし」の道には、たくさんの落とし穴が潜んでいます。それを回避するには単に翻訳表現に留意するばかりでなく、日中両国の置かれた広範で根本的な状況を理解する必要があります。
相手国の文化的・政治的背景をよく把握せずに安易な表現が一人歩きして、「おもてなし」のつもりが国際問題にまで発展する様なケースは、ウェブの世界では決して珍しいことではありません。

日本発の中国語サイトを閲覧していると、言語選択メニューで、簡体字中国語を「中国」、繁体字中国語を「台湾」と表記しているサイトに出会うことがあります。
このような表記は、中国語に対する根本的な誤解の表れであり、また大きな危険を孕んだ間違いでもあります。

まず、中国語の簡体字と繁体字は、中国(本土)と台湾で単純に分かれるものではありません。
繁体字は、台湾の他に、香港やマカオ、大部分の華僑・華人に使われています。それに対し、簡体字は、中国本土の他に、シンガポールやマレーシア、一部の華僑・華人に使われています。

簡体字を「中国」、繁体字を「台湾」と表記することは、中国本土と台湾以外の「第三のカテゴリー」——香港やマカオ——を無視することになります。
香港からの訪日観光客は年間5位(日本政府観光局2008年度調べ)と大きなパイを占めていますので、無視していい相手ではありません。

また、「中国」と「台湾」を分けて表記すると、中国の「国家分裂」を鼓吹する意図が疑われてしまいます。
いわゆる「台湾問題」は、政治・歴史にかかわる非常に敏感な課題なので、日本をはじめ、世界各国の行政とマスメディアが「台湾」という言葉を慎重に扱っています。ニュースでよく聞く「国と地域」という言葉は、「国」ではなく「地域」である台湾や香港のために使われています。「中国」と「台湾」を分けるような表現は、中国政府と国民を激怒させてしまう恐れがあるため、特に政治的意図のない限り、どこでもNGです。

さらには、メニューのアイコンとして中国と台湾の国旗を使うこともNGです。象徴的で言語の壁を越えて攻撃の対象となりやすいだけに、いつの間にかネガティブ・キャンペーンが展開され、中国本土からのアクセスでサーバがダウンするほど反感を買ってしまうような事態を招きかねません。

また、英語で表記する場合は“Chinese”と“Taiwanese”ではなく、“Simplified Chinese”(簡体字中国語)と“Traditional Chinese”(繁体字中国語)とすべきです。いわゆる「台湾語」(Taiwanese)は中国語の下位方言である「閩南語」(話し言葉)を指し、繁体字(書き言葉)のことではありません。さらに、“Chinese”と“Taiwanese”は「中国人」と「台湾人」の意味もあるため、政治的にも軽率で危険な言い方です。

このように、「中国」と「台湾」の表記は、政治的には国際問題になりかねず、文化的・言語的にも間違っていますので、「中国」・「台湾」ではなく「简体中文」・「繁體中文」と正しく表記しましょう。
ウェブサイトの表記一つで、国際問題になる可能性があるということを忘れないでください。

Page top
WebWorks for Global Business & Communication