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Meet the world on the web

2005.08.12
喜住明美

バイリンガル国カナダのサイトが伝えること

カナダ・ケベック州のモントリオールに留学した経験があるのですが、その場所を留学先に選んだ理由の一つは、カナダの公用語である英語とフランス語を同時に学ぶことができると考えたからでした。しかし、現地に行って初めて気付いたのですが、カナダ人のほとんどはバイリンガルではありません。2001年の国勢調査によると、英語しかわからないカナダ人は約2,960万人中2,000万人で全体の約68%に上ります。逆に、フランス語しかわからないカナダ人は 400万人弱(全体の約13%)で、このほとんどがケベック州に住んでいます。このように、各言語を話す人口や地域に大きな偏りがあるのが、カナダのバイリンガリズムの特徴です。

しかし、カナダ政府の公式サイト(http://canada.gc.ca/) では、そのような言語による偏りは全く見られません。トップページでは、「重要なお知らせ(Important Notices/Avis importants)」へのリンクが張られている以外は、両言語による歓迎のことばと、EnglishまたはFrenchと言語を選択するボタンがあるのみで、二つの言語が完全に同等の立場でユーザーにメッセージを伝えています。そのあと各言語のページへ進んでいっても、提供されている情報の内容と量は全く同じです。

英語もフランス語も公用語なのだから当たり前だと思われるかもしれませんが、このような完璧なバイリンガルサイトが運営されているのには、1969年制定(1988年改定)の公用語法(The Official Language Act)が大いに関連しています。「連邦機関の両公用語による国民へのサービス」について規定されているため、各言語で提供されている情報に差があれば、国がこの法律に違反する行為をしていることになるのです。もしこのサイトに不平等があれば、国民は公用語局(Office of the Commissioner of Official Languages)に苦情を申し立てることができるのですが、当然ながら、こちらのサイトも完璧なバイリンガルになっています(http://www.ocol-clo.gc.ca/)。

このように、本当の意味でのバイリンガルというのは、二つの言語が全く対等の立場にある状態のことで、例えば「日本語を話しますが、英語も少し話せます」というのは、バイリンガルな人ではありません。サイト上でも同じことですし、またマルチリンガルという言葉を使うときも同様です。我が国日本の首都である東京都のサイト(http://www.metro.tokyo.jp/index.htm)はさすがに外国語ページも充実していますが、そのトップページの情報はすべて日本語で、英語・中国語・韓国語へのリンクが張られているという構造から、日本語が最優先言語として扱われていることが読み取れます。また、私が住む東大阪市のサイト(http://www.city.higashiosaka.osaka.jp/) でもこれらの言語のページがありますが、その情報量には日本語と比べて圧倒的な差があり、マルチリンガルサイトとはほど遠い状態です。このことは、少なくともサイト上では、これらの言語もしくはその言語を話す住民が、日本語や日本人と対等に扱われていないことを示しています。

一度、みなさんが住む街のサイトを見てみてください。自分の街が、異なる言語や文化をどのように捉えているかを知るきっかけになるかもしれません。国情の違うカナダと同じようにはいきませんが、グローバル化が進むなか、同じ街、同じ国に存在する異文化を尊重するということ、そして、それをサイト上でどのように表現していくかということは、モノリンガルな私たち日本人にとって大きな課題になっているようです。

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