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Meet the world on the web

2005.09.20
喜住明美

人口736万のBig Country~小国を大国に変えるスイス人の誇り~

ヨーロッパの中心に位置するスイスは、九州よりやや小さい面積の国土に、約736万人の人々が暮らす小さな国です。チューリッヒ中央駅ホームにずらりと並ぶ電車の行き先には、パリ、ミラノ、ミュンヘン…といった街の名が見られ、この国がフランス、イタリア、ドイツの大国に囲まれているのを改めて感じさせます。しかし、スイスの一人あたり国民総所得(GNI)は2002年度に37,930ドルで、日本の33,550ドル、アメリカの35,060ドルを超える世界トップレベルです。また、世界から資金が集まるその金融市場の意義や、ロレックス、オメガといった高級ブランド時計を傘下におくSwatchグループ(http://www.swatchgroup.com/)の存在などを考えると、スイスを「小さな国」と呼ぶのは不適切かもしれません。

機械・機器や金融、観光と並んでスイスの主要産業の1つに化学があります。医薬品会社ではノバルティス(http://www.novartis.com/)が2002年度売上高で世界第6位、ロシュ(http://www.roche.com/)が世界第9位にランキングされていて、日本では最高の、世界第16位の武田薬品(http://www.takeda.com/)を大きく引き離しています。このスイス2社のサイトにアクセスすると、使用言語は英語のみで構築されているのが分かりますが、スイスの公用語はもちろん英語ではありません。両社が本拠地を置くバーゼルではドイツ語、他地域ではフランス語、イタリア語、レト・ロマンシュ語が話されていて、これらの4ヶ国語がスイスの公用語となっています。つまり、このスイス企業のサイトには、自国語ページが全くないというわけです。

他言語へのリンクの代わりにあるのは、国を選択する機能です。ノバルティスのサイトでは地球儀のアイコン、ロシュのサイトでは"Countries" のインデックスをクリックするとローカルサイトへのリンクがあり、ユーザーはそこにアクセスして初めて自国語の情報を得るようになります。同じスイス人ですら同様の手間を強いられるこの構造から、この両社が、愛知県人口とほぼ同じサイズ(愛知県:約725 万人)の小さな国内市場ではなく、世界を対象に情報発信しているのは明らかです。武田薬品の本社サイトが、あくまでも国内市場をメインターゲットとしているのとは事情が大きく異なっています。

以上のようなお話をすると、スイスは国際的で洗練されたイメージを受けられるかもしれませんが、実はとても地域色の強い国でもあります。26 のカントン(州)がありますが、各州が強烈な個性を持っていて、日常生活でもお互いライバル心を剥き出しにする場面がよく見られます。例えば、ドイツ語圏のある村に嫁いだアメリカ人女性が地域に馴染もうとドイツ語を学んだところ、となりの村の訛りを身に付けてしまったために、かえって姑にいじめられたといったようなジョークが横行するなど、ドイツ語圏対フランス語圏ともなると、文化的・経済的・政治的な対立も見られ、その様子はEU加盟に関する是非を問う国民投票の結果などにも現れているようです。

国内ではとなり村と訛りのことで争い、世界ではトップクラスの国として英語で他国と渡り合うスイス。全く正反対に見えるこの二つの側面には、ある1つのキーワードが見え隠れします。それは「プライド」。自分が生まれ育った街や村を誇りに思う気持ち、スイス人としての誇り、それらが国民一人ひとりの意識や能力を高め、小さな国を世界の大国にのし上げているのではないかと考えています。

私たちは、日本人であることを誇りに思えているでしょうか。

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