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Meet the world on the web

2005.12.07
喜住明美

「道路標識」に学ぶウェブ英語~ユーザーを目的地にナビゲートすることば~

「英文サイトを作りたいので、とりあえず、いまある日本語のサイトを翻訳してもらえないか」という依頼を受けることがよくあります。しかし、「わかりました。ではとりあえず英語にしましょう」といかないのがウェブ翻訳です。英文サイトを作る理由は、海外新規顧客開拓、海外既存顧客へのサービスなど、会社側すなわちサイトオーナー側によって様々かもしれませんが、ユーザーは、「自分が必要としている情報を得るため」にサイトにアクセスします。そのため、ユーザーが求める情報を、平易に、確実に、迅速に提供できるのが良いサイトということになるのですが、日本語を英語にそのまま訳すと、ユーザーにとっては不便な、悪いサイトになってしまう場合があるのです。

日本語の文章を英語に訳すと、通常約1.2~1.5倍の長さになります。また、日本語はいろいろな飾りや、間接的な表現で丁寧さを高めようとする言語で、サイト上に問合せ先を表示する際にも、「ご不明な点がございましたら、大変恐れ入りますが、下記のアドレスまでご連絡いただきますようお願い申し上げます。」といった文章が見られます。しかし、これをそのまま英語に訳すと、丁寧なようで実は、とてもくどくて長い、やっかいな文章になってしまいます。不明点を抱えているユーザーに対しては、"If you have any questions, please contact us."等として、問合せフォームへのリンクやメールアドレスを分かりやすく示したほうがずっと親切なはずです。

ところで「道路標識」も、単純明快なことばが親切だと思われる好例です。道の途中で山崩れがあるとして、そこに、「ドライバーの皆さん、もう少し行くと山崩れがありますので、お忙しいところ申し訳ありませんが、スピードを落としていただきますようお願いいたします」とでもあれば、この後ドライバーがどうなるかは明らかです。その代わりに"Landslide Ahead!"(山崩れあり)の標識があれば、他に何を言われなくても、ドライバーはすぐさま減速運転をするでしょう。ユーザーはサイトの上で、目的地に向かって運転しているようなものです。適切なことばを使って、ユーザーを平易に、確実に、迅速に、必要としている情報まで導かなければなりません。

しかし、適切なことばを選ぶというのは容易ではなく、また、1つの単語の持つ重要性が極めて高くなります。言い換えれば、1つの単語の間違いが致命的な事態を引き起こすこともあります。11月14日付けのAFP通信配信のニュースによると、2008年五輪に向け、北京が間違いだらけの英語標識を修正するキャンペーン("Use Accurate English to Welcome the Olympics" campaign)を開始したそうです。民族公園が"Racist Park"、非常出口で"No entry on peacetime"となっているなどのケースが、市民から300以上も報告されたのがきっかけのようですが、(これらの2例がどうしておかしいのかに気付かない場合は特に)ユーザーを気持ちよくおもてなしできるよう、日本の英文サイトもこのようなキャンペーンが必要かもしれません。

このように、英文サイトは単純な翻訳作業では作成できないことがあり、その他にもサイト構成や、対象ユーザーによって言葉の使い方を変えるなど、検討すべき項目がいろいろあります。翻訳者に翻訳だけをさせるのではなく、企画の段階から制作メンバーの一人として参加させたり、サイトが専門のネイティブに校正を依頼したりするなど、少しの工夫を加えることで、サイトの質が大きく変わってきます。より良い英文サイトを通じて、ユーザーの満足度を高め、企業価値の向上につなげていただければと考えます。

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