ホーム > レビュー > Meet the world on the web


Meet the world on the web

2005.10.04
古月幸江

論壇文化〜中国の人文BBSコミュニティ事情〜


いま中国語では、「論壇」とも呼ばれる"BBS"がたいへんな盛り上がりを見せています。中でも一般ユーザーが趣味で利用するBBSは、専門的な学術分野やビジネス情報を扱うものと区別するために、「人文BBS」と呼ばれています。ここでは、社会・歴史・芸術・文学から恋愛に関する話題まで、幅広いテーマが採り上げられ、非常に活発な議論が展開されています。

中国人ネットユーザーにとって人文BBSコミュニティがどれほど重要な意味をもつかは、言論・情報を制限されていない日本人には容易に想像できないかもしれません。人気BBSコミュニティの一つである「天涯」(www.tianyaclub.com)を例に見てみましょう。

このコミュニティは300余りの公共掲示板と21万のブログを有しています。アクセス数は常時7万以上を維持しており、そのうちのおよそ10分の1は登録会員です。この規模のコミュニティはほかにも多くあります。さらに、もっと趣味的な小さなコミュニティ(http://bbs.why.com.cn/など)は数えきれないほどあります。

「天涯」の大きな特徴は、比較的短い文章でやり取りするYahoo! ChinaのBBS(http://cn.bbs.yahoo.com/) などポータルサイトが提供するサービスとは違い、長い文章で本格的な議論が行われている点にあります。親記事は、中国語500文字(日本語700字相当) を満たさないと掲示できません。数千字に及ぶ長文で自分の考え方をしっかり述べ、多いときには数十人の参加者が真剣な議論を繰り広げ、リードオンリーのメンバーを含め、一つの記事に何百回、何千回のアクセスが記録されることがよくあります。21世紀に入ってから飛躍的な成長ぶりをみせた人文BBSでは、中国独特の「論壇文化」が、いま開花しています。盛り上がる話題は、日本でも中国でも同じで、時事問題から芸能関係までさまざまです。反日運動が激化した際は、BBSやブログでも議論が白熱し、多くの人々に影響を与えました。

中国では情報量の制限から、書籍や雑誌が充実しているとは言い難い状況です。海外で出版されている中国語の本(歴史・政治関係が多い)はほとんど見られませんし、中国事情についての研究などは、新聞や書籍など旧来のメディアでは発表できないケースもあります。そこで価値があると思った本や研究の内容をBBSコミュニティにおいて記事の形で掲載し、討論を期待する人々がいます。学術的なテーマに限らず、社会的な関心を集める話題では学者も参加し発言しています。海外在住の中国人にも熱心な参加者が多く、国内では知り得ない情報や知識を提供しています。このように、中国の政治や歴史について積極的に係わろうという中国人にとっては、BBSは欠かせない情報源だといえるでしょう。

また最近、中国ではブログに小説を発表することが流行しています。「ネットライター」と呼ばれる彼らは必ずしもプロ作家志望ではなく、ネット上で多くのアクセスユーザーからの反応を得ながら、長編小説またはエッセイを書き上げることに喜びを感じているようです。

われわれが中国について知りたいと思う時、このようなバーチャル世界の「論壇文化」に接すると、また違った一面が見えてくるでしょう。一方でこのような BBSの取り締まりに、政府が頭を痛めていることは確かですが、日々増え続ける膨大な数のBBSを把握しきれない、というのが実情でしょう。

Page top
WebWorks for Global Business & Communication