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Meet the world on the web

2005.08.22
沈惠泳(シム・ヘヨン)

お互いを映す鏡〜電子行政システムの運営から見る韓国と日本〜

日本という国は私の故郷・釜山からみると最も身近な外国です。海辺から遠望できる対馬、そこへアンテナを向けると見える日本のTV放送、街を走る日本ナンバーの車、日本との連絡船…。しかし、日本のイメージで最も強烈なのはやはり高性能の家電製品でした。釜山には日本を行き交う行商人が様々な日本製品を売る市場があります。今でこそ韓国製家電製品も日本に輸出されていますが、私の幼い頃は日本製=高嶺の花。日本はハイテクの国そのものでした。しかし、来日後、日本社会に溶け込むうち、徐々に「ハイテクを作り出しても活用せずにいる国」という印象も抱くようになりました。

たとえば、住民票の写しや戸籍謄本取り寄せ、外国人ならば外国人登録関連の届出等、ほとんど窓口へ出向くか郵便を利用するしかありません。現在、韓国では官公庁への届出はかなりの部分「電子政府サイト(https://www.egov.go.kr/)」上で可能、手数料はオンライン決済、住民票などにいたっては電子認証を利用し自宅で印刷できます。

届出だけではありません。日本では行政サイトにおいて、議論や簡単な質問が可能な掲示板の設置さえ稀有に見えます。韓国では、例えば「釜山市役所サイト(http://www.busan.go.kr/)」を見ますと市民からの自由な発言を掲示したり、市政に対する具体的提案や苦情は個人認証後に担当者へメールで建議するシステムが構築されています。

また、釜山市役所には日本語サイトもあるのですが、掲示板はないものの、メールアドレスを掲示し、問い合わせが可能となっています。他の自治体では外国語サイトに掲示板が運営されている所もあります。そして釜山市の交流都市は私の住む福岡県の福岡市ですので、韓国語サイト(http://www.city.fukuoka.jp/index-k.html)を見てみました。

ビジネス用メールアドレスはコンテンツにあるのですが、一般的な質問に対応するものは残念ながら見受けられません。ただ、これは福岡市に限った事ではなく、行政による韓国語サイトはどんなに立派でも惜しい事に情報の掲示のみが多く、閲覧者の質問に外国語で対応するのは難しいようです。首都・東京都の韓国語サイト(http://www.metro.tokyo.jp/KOREAN/index.htm)でも専用メールアドレスがない上、「電話での問い合わせは特別明記されていない限り日本語で」との但し書きがあります。

この点でも同じ首都・ソウルの日本語サイト(http://japanese.seoul.go.kr/)には日本語サイト用の問い合わせメールアドレスが明示されているのと対照的に映ります。

これまでお話しました通り、すでに韓国では「ウェブ上で行政手続、質疑応答」が普通になっていますから、行政のみならず、今後韓国語コンテンツの運営を検討中の団体・企業などは特に運営面で情報の一方通行にならない態勢が必須であるといえましょう。

とはいえ、私は「韓国が電子行政で先んじている」などと悦に入りたいのではありません。なぜなら韓国ではこうした電子行政の基盤にはいわゆる「国民背番号制」である住民登録番号がある訳で、こうした個人情報運用に批判が多いのです。また日本の住民基本台帳コードとは違い、住民登録番号の民間利用に規制がないため、個人情報流出が当然の如く問題となっています。個人情報をウェブ上でやり取りすることに対する日本人の慎重さも理解できる状況というべきでしょうか。

不便さを甘受しつつ、慎重に電子行政の構築を目指す日本、電子行政システムを積極運用しながら、個人情報の保護に悩む韓国。よく「鏡のような韓日」と言われますが行政ウェブサイト韓日対比は両国の中庸こそ理想であると示唆しているのかもしれません。

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